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導入事例

DX企画推進力を上げ企業や大学の教育現場の育成支援にAIを活用ーITOKI×マインドテック

コロナ禍で進んだデジタル化は、私たちの生活を一変させました。リアル・オンラインを組み合わせたハイブリッドな働き方へと移行しつつあるいま、オフィスをはじめとしたリアルな空間には新たな目的が求められています。

こうしたなか、株式会社イトーキ(以下:ITOKI)でソリューション企画に従事する大橋一広さんは「新たな学びの醸成」にリアル×デジタル空間の価値を見出し、DXや新規事業創出で課題となる人材育成を支援する新たなデジタルソリューション開発に取り組んでいます。

マインドテックもご支援したこのプロジェクトにかける思いや具体的な取り組みについて、大橋さんにお話を伺います。

大橋 一広 さん

株式会社イトーキ DX推進本部 デジタルソリューション企画統括部 統括部長

1993年、株式会社イトーキへ入社。博物館・公共文教施設の企画立案・展示空間設計に従事し、コミュニケーションデザインを担当。2004年から知的創造空間・ワークプレイス&スタイルのソリューション、新規事業開拓などに従事。2011年からICT・デジタル技術を活用した事業企画を推進し、AIやIoTなどの先端技術と知的創造空間を融合させた次世代ワークスタイルのコンセプトデザインなどを統括。現在は、デジタルを活用した新たなソリューションの開発により、企業や教育機関でのDX推進を支援している。

株式会社イトーキ DX推進本部 デジタルソリューション企画統括部 統括部長  大橋 一広 さん

DXに向けたマインドセットを醸成する新たな研修が必要に

久場:大橋さんが取り組んでいるプロジェクトの概要について教えてください。

大橋さん:ITOKIでは2022年には私が所属するDX推進本部が設立され、現在顧客へのDX支援と自社内のDX推進の両面に取り組んでいます。この2つのDXは、それぞれが相互に行き来していることが特徴です。自社オフィスはワーキングショールームとして公開しています。お客様に提供するプロダクトや空間を自分たちも活用しながら実証するなど、得られた知見を相互に生かすものづくりに取り組んでいます。

オフィス家具メーカーとして取り組んできたITOKIですが、DXを通じてデジタルを取り入れ新たな領域へと踏み出すことが求められています。そうしたなかDXに取り組むには、マインドセットを変えるための、新たな『学びの場』が必要だということがわかりました。

DXは全社員の底上げも業務の1つです。新しいサービスや技術を使って自分たちの業務を効率化し、生産性を上げる必要があります。そのためには企業として目指すべき方向性と、DXへのマインドセットが合致しないと「なぜDXするのか」と疑問を抱きかねません。

同時に、ITOKIの強みを活かすマインドセットを醸成することも重要です。強みとなる技術を活かすためには、DX推進部門だけではなく、営業担当や家具開発者やデザイナーにも展開できる独自の教材が必要です。

久場: そのなかで大橋さんがDX活用のための企画力向上に取り組む背景についてお聞かせください。

大橋さん:私はITOKIに入社して30年余りになります。これまではオフィス家具メーカーの一員として携わってきました。ですがDXを念頭に考えると、これまでかかわってこなかったAIやデータ活用などのデジタル領域に踏み出し、新たなビジネスに活用していくことが、重要な課題だと考えました。

そうしたなか世界はコロナ禍に見舞われ、業務のデジタル化が進み、リモートワークも普及しました。すると人々の生活様式が変わったことで、オフィスのようなリアルな空間には「行きたくなる価値」が必要になります。リアル空間の持つ個々人の成長育成・共創する場という機能が、その価値のひとつです。

人々の成長育成を促すような場づくりには、ハードとソフトの両面から仕掛けることが大切です。ハード面は物理的な空間としてデザインし、目的に応じた最適な設えが欠かせません。最近では、多くの企業がカジュアルな雰囲気のオフィスを作られていますが、会話が弾むことで従業員同士の関係性が築かれ、それによるアイデアの創出を促す効果が期待されます。

写真左:大橋さん 右奥:久場 右手前:松井

久場: オフィスの家具や空間を扱ってきたITOKI様が持つ従来の強みですね。

大橋さん:ですがそれに加えて、ソフト面も重要です。いくら空間デザインにこだわったとしても「どのように学ぶか」という基礎の設計がなければ、学びの促進にはつながりません。そのため本格的な学びの醸成には、教育カリキュラムの内容にも踏み込む必要があります。

そのひとつがデザイン思考でした。デザイン思考は、ユーザーのニーズに応えるサービスを生み出すことで、社会にイノベーションをもたらし、新たな価値を創造すべく用いられる手法です。その特徴から本質的な価値創出に有効な手段で、変革が求められる昨今、企業には欠かせない考え方だと思います。

企業には、DXを通じて年齢や専門分野の垣根を超えた新たなコラボレーションのなかで、新しい仕事を作ることが求められています。新たなビジネスやアイデアを創発するためには、従業員一人ひとりがデザイン思考について理解し実践することが必要です。

そのため人材育成やDX推進においてもデザイン思考の価値は今後さらに高まると予想されます。ITOKIとしても「デザインワークを高度化したい」という狙いから、デザイン思考が重要だと考えたのです。
イトーキでは、デザイン思考のプロセスを実践する家具やツールも商品化しています。

久場:従来の強みを拡張する新たな価値を創造するために、デザイン思考に取り組んでいるわけですね。

大橋さん:そのとおりです。私たちは、これまで取り組んできた空間設計のノウハウに加え、その場に集う人の創造性を育むプログラム(カリキュラム)を新たに交えることで、人々の行動変容や成長育成を促す一体的な場づくりに取り組みたい、と考えています。

こうした構造はオフィスに限らず、大学などの高等教育機関にも求められています。そこで教育機関でキャンパスの空間設計から学習活動/教育カリキュラムまでを一体的に支援し、学生たちの学びの醸成を図る「スマートキャンパス」という新たなソリューションの開発にも取り組んでいます。

スマートキャンパスではとくにデザイン思考を組み込んだカリキュラムに取り組みたいと考えています。というのも学生たちはデザイン思考のリテラシーがまちまちで、個人のスキルによる傾向があります。

個人間で差ができてしまっており、大学や学部全体でのリテラシーの醸成には至っていないのです。そこで研究室や教室のようなインフラとして、そこに集う学生たちにカリキュラムとしてデザイン思考のノウハウを提供していきたいと考えています。

グループワークの質を評価するAIプロダクトの開発へ

久場:そこで、グループワークに関するAIプロジェクトに取り組まれているわけですね。マインドテックも支援しているこのプロジェクトについて教えてください。

大橋さん:いま取り組んでいるのは、「グループワークを測る」という新たな仕組みづくりです。グループワークで話される音声を収集、解析、可視化する試みです。発言の量や密度、空気が変わったキーワードなどを、自然言語処理技術を用いることで、議論の内容を可視化し、データで解析できるようになります。

例えば、1クラス30名の学生がグループワークを「5人6チーム」で取り組む場合、その時先生の立場からすると、30名を1人ひとり評価することは非常に困難です。チーム全体としての評価は、最終的なプレゼンテーションといったアウトプットから評価できます。ところがチームの中の個々人の評価はグループへの貢献を張り付いて見ていないと判断できません。

加えて貢献と一言で括っても、ファシリテーションやリーダーシップ、フォロワーシップと、その役割もさまざまです。こうした場合のほとんどは「どうチームに貢献したか」が見えない、判断・評価できない状況になっています。

そこで議論で交わされる言語のプロセスを測ることで、議論の発散から収束に向かうという一連の流れをデータの痕跡で追うことができます。議論に出てくるキーワードやユニークな言語が可視化されることで、その結果の成果物がユニークなものになるか、凡庸なものになるのか、関連性が見えるようになります。

こうしたデータを活かすことで、グループワーク全体の質も、個々人のスキルも高めることができるでしょう。会議やクリエイティブワークにおける発言や感情の遷移は、データとして有効ではないか、という仮説がこのプロダクトを開発するに至ったきっかけといえます。

空間設計とカリキュラムをあわせた学校現場での実証研究も進行

久場:空間設計をプロダクトとして、カリキュラムと統合してソリューションにするという形ですね。すでに現場での実践も行われているそうですが、どのような状況でしょうか。

大橋さん:はい。ソリューションの一部はすでに学校現場で実践しています。静岡聖光学院(2022年度)では、メタバースとリアルな空間の学習環境デザインと、教育カリキュラムを構築するプロジェクトが文部科学省の次世代推進事業として採択され、実証研究を実施しました。

ここでは2つのテーマに取り組みました。1つはメタバース空間での研究発表会。生徒たちが日頃興味を持っているテーマについて研究し、その内容を生徒たち自らがデザインしたメタバース空間上で発表するというものです。現実では作りにくいデジタルならではの自己表現や制作物を展示し発表しました。

もう1つは、タイにある提携校の生徒たちと、同じメタバース空間に入ってコミュニケーションするというもの。ヘッドマウントディスプレイを使いながら、アバターを操作する環境をメタバースで構築。身振り手振りや相手の距離感を感じられるなか、海外の生徒たちとリアルに近い形での英会話コミュニケーションの場を実現しました。

こうした研究で参加した先生方も新たな気づきを得られたといいます。例えば言語表現が得意な生徒は、トークや発表で表現しますが、苦手な生徒も、得意な非言語表現で、工作や絵を描くように3D設計を作りうまくメタバース上で表現することができたのです。さまざまな生徒たちの表現の場として、メタバース空間が生かせるとわかったことは、この研究の大きな成果といえます。

またこの研究を知ったことで、次年度の入学を希望した複数名から「メタバースに取り組みたいから入学を希望した」といううれしい反応があったそうです。学校現場で採用された1つの事例を作れたことに加え、こうした成果につながるところまでやりきれたことは、当社としてもより意義深いものになったと思います。

研究プロダクトを世に出すための開発のお手伝い

AIプロダクトの開発プロジェクトでは、大学と共同研究で進めながら、マインドテックの松井も参画しました。

基礎となるコンセプトや考え方を学生とITOKIで考案し、それに対し、松井はプログラム設計段階でのアドバイスや、システム品質向上のための調整など、実際のプロダクトとしての運用を見据えた取り組みを中心にご支援しました。

松井:ビジネス展開を前提とする以上、AI活用やシステム開発で研究段階とは考慮すべきことが異なります。そういった点をお伝えしながらご支援できたかと思います。

大橋さん:そうですね。このプロジェクトはプロダクト開発と同時に、伴走型のプログラムで進め、学生や従業員の人材育成にもつながったと考えています。

久場: この他にITOKI様にはDXへのマインドセット醸成のための研修もご支援しました。取り組んでみていかがでしたか。

大橋さん:こちらからの要望はDXの基本的な概念から、ビジネス活用パターン、ビジネス企画する際に必要な技術知識をインプットしてほしい、また私どもの業界に寄り添ったユニークなコンテンツでつくりたい、いうものでした。そのため綿密に相談に応じていただき、気になる技術やソリューション事例を決めていきました。

技術的なポイントは、IT会社ではない、家具開発者やデザイナーにも理解できるような用語やビジュアルを作成、事例も関連業界に寄せるなど、独自のコンテンツにカスタマイズしていただきました。魅力的なソリューションを開発するためには、DXのリテラシー向上が必要です。残念ながら人は役に立たないものは勉強しません。役に立ち、やりたいという意思があるからこそ取り組めると思います。

そこでより親近感を持ってモチベーションを高められるように、近しい業界の取り組みや、ITOKIが目指すDXに沿うようなコンテンツにカスタマイズしていただきました。実際従業員の興味関心に響くような構成にできたことは良かったのではないでしょうか。

このデジタルサービスの企画・開発では、学生や先生たちが、いかに楽しく自然に学習行動のデータを収集できるのか、音声と画像のデータでグループワークをどう分析できるのか、と試行錯誤しました。本質は、学生や先生、自分自身にメリットになる価値に変換するサービスができれば、広く世の中の役に立つ実感が持てます。

今後はこのプロジェクトでの成果を、社会実装へ実際のサービスとしてリリースできるよう、取り組んでいきます。

久場: 当社では社員のDX教育からDXコンサルティングまで、幅広いDX支援をさせていただいますが、今後特に取り組みたいのは「研修とコンサルティングの間」の立ち位置での伴走支援でした。

研修だけでは、教育に終始してしまい実践との間にギャップが生じてしまいます。一方コンサルティングだけではノウハウがクライアント社内に蓄積されません。

今回ITOKI様と研修の企画から、プロダクト開発の入り口まで、ご一緒させていただいたことで、リテラシーの向上とノウハウの蓄積の両面に取り組めたと感じています。ITOKI様の現場から、アイデアが生まれ、それを形にしていく。そんな流れを作っていけるように、私たちも貢献していきたいと思います。

最後に、今回開発サポートさせていただいたグループワークを測るシステムをわれわれの教育研修現場でもぜひ使ってみたいと思います。

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業種

  • 空間デザイン・ディスプレイ

導入したサービス

  • AI講座・研修支援
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